TATAMO! トピック topic

生産者もデザイナーも消費者も一緒にTATAMO!

クリエイターのための共同オフィスCo-labの企画運営や日本料理店の総合プロデュース、これまで数々のプロジェクトのプロデュースをてがけてきたTATAMO!クリエイティブディレクターの田中陽明さんにTATAMO!が目指す姿について話を聞いた。

ひとつの出会いから芽生えたTATAMO! の種

TATAMO! クリエイティブディレクターを務める春蒔プロジェクト(株)の田中陽明さん

TATAMO! の始まりは2007年にとある講演会に田中さんがゲストとして招かれたことがきっかけだった。その講演に参加していた百瀬畳店の百瀬和幸さんが田中さんに話しかけたのだ。

「知人の経営コンサルタントから依頼された講演を通じて、百瀬さんと知り合いました。百瀬さんから『時代の流れに沿った企画をとりいれていかないと、畳業界に先はない』という話を聞き、畳を使ったプロダクトのアイデアを提案したことを記憶しています」

その後、田中さんのアドバイスにより百瀬さんは農商工連携の助成金に申請、承認される。そうして畳を使ったデザインプロジェクトが本格的に始動していく。
プロジェクト始動の第一段階としてまずは発案者である百瀬さんとイグサ農家の園田 聖さんを交え、田中さんがヒアリングを行った。その場で現状の問題を把握をしながら、プロジェクトの根幹を固めていく。

この三人なら歩調を合わせてプロジェクトを実現できる

2009年7月には、熊本県八代を訪れてイグサの刈り入れを体験。田中さんはじめTATAMO! プロジェクトメンバーも園田さんのお手伝いをした

「ヒアリングのなかで百瀬さんからイグサ農家が捨てている94センチ以下のイグサを使ったプロダクトを、園田さんが生産しているイグサを素材にして作りたい。私にはデザインで関わってほしいと言われました。プロジェクトの目的がはっきりしている分、話はスムーズでしたね。そしてなにより百瀬さんと園田さんのモチベーションが高いことが印象的でした。
お話を聞くうちにわかってきたのですが、園田さんは畳業界に対して反骨心をもって独自の活動をしている方。百瀬さんも新しいものに敏感で、もの知り。お二人の話に共感できる部分もあり、一緒に新しいことをやっていくのに歩調を合わせられるタイプだと直感しました。
そして百瀬さんのお話を聞くうちに『これは畳だけの話じゃないな』と感じたんです。これは日本の伝統産業が抱えている共通した問題なんだと思いました。畳のデザインプロジェクトを通じて、日本の伝統文化を現代につないでいくひとつの法則づくりができたらいいなと、個人的にそう思いました」

三人の目的と意識がはっきりしていたことから、ヒアリング後はとんとん拍子でプロジェクトが進んでいく。通常、コンセプトを決め、サンプルをつくるまで1年から2年程度かかるものだそうだ。しかし、TATAMO! については約半年でサンプル制作までこぎ着けた。
ここまでスムーズに話が進んだのは、デザイナーも含め関係者が畳という素材を身近に感じていたことと、発案者である百瀬さん、園田さんが畳業界に対して危機感をもって取り組んでいたからではないかと田中さんは言う。さまざまな意志が相乗的に高まり、急速にこのプロジェクトのクオリティが上がっていくのを感じたそうだ。

ひとつの運動体としてTATAMO! は成長していく

約40点のネーミング案の中から「TATAMO!」が決定した
TATAMO! に関する企画書たち

「プロジェクトのネーミングですが、最初は30から40くらいのアイデアをアートディレクターの南部隆一くんから提案されました。そのなかから決まったのが『TATAMO!』。これは一緒にこのプロジェクトに参加しようという呼びかけるメッセージです。ウェブサイト内容もTwitterやブログなど使ってプロジェクトの進行を追いかけ、ユーザーともコミュニケーションできるようにしました。ロゴについても伝統工芸を復活させるプロジェクトではなく、もっとグローバルな視点でやっていこうということでニュートラルなデザインにしました」

TATAMO! プロダクトは対象する市場を日本に限らず、広く海外へ向けている。それは百瀬さん、園田さん、田中さんともプロジェクト始動当初から共通して考えていたそうだ。

「すでに畳の国内需要は頭打ちで、中国産畳がシェアのほとんどを占めています。価格競争では中国に勝てないだろうし、そう考えるとデザインという付加価値をつけて販売するしかないんですよね。それならば現代のライフスタイルに合ったプロダクトをつくっていこうとなりました。
今度もTATAMO! から新しいデザインプロダクトがどんどん発表される予定です。
最後に、これは私の個人的な目標ですが、TATAMO! ではプロダクトができるまでの過程を公開しているので、日本の伝統工芸を復活させるプロジェクトでこの手法を活用してもらいたいと思っています。TATAMO! をベースとしたプロジェクトの進め方がフリーソースとして広まってほしいと、そう思っています」